コンビ株式会社 代表取締役社長 小堀英次

コンビ株式会社 代表取締役社長 小堀英次

「満足レベル」を超えた「感動レベル」をお届けしたい。
そういった意味で「感動創造ナンバーワン企業になる」という経営方針を掲げました。「自分自身の感動や無意識を、意識化できるような活動」をしていけば、それができると思っています。
自分自身を知ることで、「答え」や「真の目的」を知ることができると確信しています。

コンビ株式会社 代表取締役社長 小堀英次

Topics

▶︎ 事業内容

▶︎ 挫折や失敗の記憶はない

▶︎ 感動創造ナンバーワン企業


事業内容を教えてください

ベビー用品全般を取り扱っています。
メインはベビーカー、チャイルドシート、ベビーラックであり、弊社はこれを大物三品と呼んでいます。
その他ベビー用品もたくさん扱っており、この業界において品揃えが最も多いメーカーと自負しています。

失敗談などはありますか?


挫折や失敗の記憶がないです。死にそうになった体験はありますが。
ただ、もう絶対にダメだと思ったことは一回もありません。色々な逆境を経験していますが、結局全て最終的になんとかなっています。
なにかあっても、すぐにその場で「なんとかなる」と思いますから、「逆境だ。どうしよう」と思ったことが全くありません。能天気なんでしょうね。

具体的な例を一つお話しします。
7年間香港に駐在しており、最後の1年間は新しい工場用地を探していました。弊社の工場が中国に2つあります。そして日本で、「チャイナプラスワン」という動きが盛んだった時期がありました。これは、中国の工場を残しつつ、「プラスワン」としてより安い場所を探すということです。
弊社もその流れに乗り、「もう一段品質を保ちつつ、もう一段コストの安い工場」を探すことになりました。

ここで私が命じられて、一人でベトナム・カンボジア・ラオスに行きました。
毎月1エリアずつ自分で計画を立てて訪問して、そこをプレゼン・状況報告して、トップをお連れして。ということを1年間ずっとやっていました。
最初はなんのツテもないんですよ。知り合いも全くいません。ですが、JICAさんやJETROさん、それから中国でお付き合いをしているメーカーさんのご紹介など、色々と駆使しながら、出張プランを自分で毎月立てて乗り込んでいました。

私が訪れたベトナム北部のエリアの話です。
道路舗装されていない山道が多くあり、デコボコで穴だらけ。
車で少し移動するだけでもかなりの時間がかかりました。揺れも酷かったです。
しかも行くときに少し雨が降っていました。どこを訪れる場合でもドライバーと通訳さんを連れていくんですが、ドライバーが「この雨はやばい、、」と言っていました。でも、早く行かないと通行止めになってしまう。だからデコボコの山道を終点まで無理矢理進みました。

翌朝、終点のさらに先の目的地を訪れました。そこで、「すぐ戻らないと帰ることができなくなるぞ」と言われ、帰りの道を急いで進みました。でも、やはり道路封鎖になってしまいましたね。私たちは普通のセダンをレンタルして行っていたんですが、他の車はほとんどトラックで、山から石を切り出したり、切った木を運搬したりしていました。
舗装もしていないのにかなり大きいトラックが走るので、さらに道路がデコボコになってしまったんです。結局、私たちも途中で止まらざるを得なくなりました。崖崩れこそ起きていませんでしたが、道がない状態です。

休憩する場所もなく途方に暮れていましたがここで運良く腐りかけた山小屋がありました。
行くところもないですし、私やトラックのドライバーたちが、その山小屋に集まりましたね。すると、その山小屋を管理しているお婆さんがいらっしゃって、慣れた態度で「またか」と言いました。「しばらく動けないから、ここで休みなさい」とおっしゃり、ベトナムの50度くらいある強い白酒を出してくれました。
さらに、「これを捌くから」と言って、お婆さんがその場でニワトリを料理してくれましたね。私とトラックのドライバーとお婆さんの何人かでお酒を飲みつつ、「もう帰れないね」などと話しました。

この状況、後から振り返ると非常にピンチだったとは思います。
ただ、お婆さんは慣れた様子でしたから、こういうこともよくあるのだろうと感じました。だからピンチはピンチでも、『むしろこんな素晴らしい機会はない』と思ってしまいましたね。

お婆さんに「何をしに来たんですか」と聞かれたので、「工場用地を探しています」と答えました。すると、お婆さんは「ここをタダであげるよ」と言いました。「ここ」とは山小屋の前にそびえる森のことですね。
お気持ちは嬉しいのですが、貰っても整備にかなりのお金がかかりそうですし、この時はいただきませんでした。

とにかく素晴らしい体験に恵まれたと思います。全ては受け取り方次第だと感じています。「死ぬようなピンチ」と考えるのか、「貴重な体験」をさせてもらっていると考えるのか。
あらゆることは表裏一体ですよね。善悪や、光と影などではないですが、『物事をどう捉えるか』が大事です。
何かが一個あるときに、一個しかないと捉えるか、一個もあると捉えるか。事実は変わりませんが、捉え方によって違いが出ると思います。私は常にプラスのほうからしか見ていないのかもしれません。「変わらない事実」をどう見るかだけ。そういう意味で、何事もマイナスに捉えたことはありません。
だからピンチの経験はないんです。

今後のビジョンや経営方針を教えてください

私が社長に就任してから、「感動創造ナンバーワン企業になる」という経営方針を掲げました。すでに社会全体も、弊社自身も、あらゆるものに満足していると思うんですよね。コモディティ化と言いますか、全てのものがもう進化しきっている。顕在的なニーズはもう満たしきっていると思うんです。
弊社で言えばベビー用品が毎年色々と進化していますが、顕在ニーズレベルではもうある程度のところまで来ていると感じています。ただ、アイデア次第ではもっと様々なことができると思っています。しかし、そのためには潜在ニーズを掘り起こす必要があるはずです。よく言われることですが、意識と無意識に注目するべきです。

意識は全体の5%くらいしかないとされています。一方の無意識が95%を占めていて、表に出ていない部分がたくさんある。ここを掘り起こしながらお客様のインサイト、つまり「潜在ニーズ」に応えるということですね。だからまだまだチャンスはあると感じていまして、弊社としては「満足レベル」を超えた「感動レベル」をお届けしたい。そういった意味で「感動創造ナンバーワン企業になる」という経営方針を掲げました。

実現のために「感動創造投稿コンテスト」を実施しています。私には、「特に最近の人は感動しなくなっているな」という実感がありますね。淡白になっていますし、実際に刺激が少ない。まず自分が感動しないと「感動創造する」ことができない、感動を作り込むことができないと私は思っています。「感動する」のも「感動を与える」のも表裏一体ですね。
だからこそ、感動した体験でも、感動を与えた体験でも、どちらでもいいから投稿しましょうと、社内のイントラネットで募集しています。全社員が閲覧できるようになっていて、「良い」と感じれば、いいねをつけて感動を共有し合うというところから始めています。これを感動商品・感動サービスにつなげていきたいと感じています。それができてこそ、お客様の本当の想いに応えられる企業になれると思います。

なんらかの形でお客様の役に立ってこそ、「企業」は存在していられるのだと思います。ですから、「いかに本質的な欲求に応えていくか」が、今後さらに重要になっていくはずです。
そしてどうしても物理的な部分が気になりやすいですが、例えばベビーカーを買う理由は、「ベビーカーが欲しいから」ではないはずですよね。確かに「ベビーカーという物」を買ってはいますが、本質的には「ベビーカーによってしたいこと」のために購入しているわけです。
だからこそ、「なにをしたいですか?」というところを深掘りしていく必要があります。無意識レベルや感動レベルまで掘り下げてみると、実は「現在のベビーカーの形である必要はない」と分かりますよね。
現在のベビーカーありき、つまり「既存のベビーカーをどう進化させるのか」という発想になってしまうと停滞します。ですが、「なにがしたくて『それ』を買うのか」という部分をもっと掘り下げていけば、これまでにない商品やサービスを創造できると思っています。

私は常々、「答えはすでに自分の中にある」と感じています。潜在意識や潜在ニーズについて考え、調査するなど、色々と頭を悩ますことはあります。そしてお客様の考えを色々知りたいと思っています。
ですが、人間の本質は変わりませんから、「自分の本質=他の人の本質」でもある。自分が感動するのであれば、他の人も感動する可能性が非常に高いと言えます。つまり自分自身を解明できれば、他の人の潜在ニーズも分かる。「自分自身の感動や無意識を、意識化できるような活動」をしていけば、それができると思っています。「感動創造投稿活動」にもそういった狙いがあります。自分自身を知ることで、「答え」や「真の目的」を知ることができると確信しています。


業界最多の品揃えを誇りベビー用品メーカーを牽引する。逆境をピンチと考えずプラスに捉え、豊富な現場経験を経営に生かす。「感動創造ナンバーワン企業」を掲げ、子育てにイノベーションを起こしていくだろう。